第23回マンション管理組合実践セミナー開催報告

第23回マンション管理組合実践セミナー開催報告  

日時:平成15年11月24日(祭日)13:30〜16:45
会場:さいたま市文化センター(3階大集会室)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 主催 : NPO法人 埼管ネット
後援 : 埼玉県住宅金融公庫南関東支店
     マンション問題総合研究所
協賛 : 関西ペイント販売株式会社

昨年11月24日に行われた第23回マンション管理組合実践セミナーは2つのテーマについて行われました。会場はほぼ満席となり、質疑応答では時間不足になるほど活発な質問や意見が続出し、両テーマともに関心の高さが見受けられました。以下にセミナーの要約を報告致します。

鈴木栄之丞 埼管ネット会長挨拶
「今日はお休みのところ参加頂きありがとうございます。今日のテーマを持ち帰り、個々の管理組合役員会で報告し今後のマンション管理に是非役立てて頂きたい。」


テーマ1:給水管更生・延命工法選定に関するパネルディスカッション
給水管の更正・延命工事には、研磨により給水管内のさびを除去したうえで樹脂被覆し、更生を図る方法と「錆びる」要因となるメカニズムから、給水管内を通る水の性質を変えることにより給水管を錆びにくくすることで、その延命を図る方法との2種類があります。今回は、前者よりライニング工法(いずみライニング株式会社)を、後者より電子防錆法(日本防錆株式会社)・脱気工法(三浦工業株式会社)各施工会社をパネラーに向え、特徴やコストについて説明して頂きました。


マンション問題総合研究所理事 鳥海順一 一級建築士より
給水管延命工法の選定について各社から発表して頂きます。築15年も経つと大規模修繕の次に大きな支出として、給水管の改修工事があります。どの工法を選定するか、真剣に考えるほど難しいものです。改修工事には大別して、更新・更正・延命の3つの方法があります。更新は一番良い方法ですが専有部の工事が多く比較的費用も掛かります。更正は言ってみれば外科的手術で非常に分かり易い。延命は錆の進行を抑制する方法です。配布資料にA3の比較表(日本管更正工業会作成資料)を付けています。この表に基づいて工法を比較検討して行きたいと思います。若干古い資料であるため、費用等に訂正がある場合は各社の工法発表の中で訂正して頂く事としたい。


いずみライニング(株) 岡崎 輝明 氏
水道管には鉄が使われています。一般的に築25〜30年のマンションでは白ガス管という剥き出しの鉄管が使用されており、築10〜15年になると塩ビライニング鋼管が使用されております。後者は白ガス管の欠点を補う目的で採用されましたが、継ぎ手等鉄がむき出しになる部分に錆が発生します。その対策としてライニング工法が用いられています。
ライニング工法は給水管の中の錆を、コンプレッサーにより発生させた圧縮空気で、高速の気流を作り、その中に研磨剤を投入し給水管内部の錆を除去します。その後防錆塗料(2液性エポキシ樹脂)を管内に塗布し平滑な連続塗膜を形成します。乾燥後硬化確認し、洗浄して通水します。
工事までの流れとしては@給水管老朽度調査、A見積り、B施工計画書の作成、C工事説明会の開催となります。ライニング部分は室内給水管、共用給水管で更新部分は水槽ポンプ回り配管、量水器周りの配管、屋上の露出配管です。実際の工事は1世帯当たり3日間掛かります。1日目が段取り、研磨ライニング工事、1日目は塗料の乾燥、3日目は片付け確認作業です。その間は仮設の給水で生活して頂き、1日目と3日目は専用部に入室作業が発生すします。全体の工事期間は50世帯のマンションで約1ヶ月間程度掛かります。費用はおよそ1世帯当たり20〜30万円(更新部の工事を含む)です。 この工法の特徴は@工事の効果が確実にすぐに現れる、A耐久性がある、Bランニングコストが掛からない、C実績がある(25年を経過)等です。ライニング2回塗りの場合は10年の工事保証が付きます。保証内容は施工部分よりの漏水、赤水、流水量低下が発生した場合です。
ライニング工事に使用する2液性エポキシ樹脂の原料には、ビスフェノールAが含まれており、環境ホルモンの疑惑物質として環境庁が取り上げておりますが、「第3回内分泌撹乱物質国際シンポジウムでビスフェノールAは体内に蓄積せず、人体への影響がない」ことが発表されました。


日本防錆工業(株) 川上武男 氏
ライニング工法は長い歴史と高いシェアを持っており、物理的な工法で分りやすく広範な工事をしています。錆の原理を電子防錆工法では電気の流れ、脱気工法は水中酸素の影響と捉え、ともに信頼できる理論・原理と言われております。電子防錆の原理を簡単に説明しますと、錆びは鉄の中の電子が奪われることで発生します。したがって、電子を与えて錆を抑制しようとするものです。その根拠はプルベイという学者の電気防食理論に基づいています。電子を与えると電位が下がり鉄の性質が錆びにくくなることを理論付けています。乾電池の1/1000以下の電流を与えると錆びにくくなりますが、電圧・電流が強過ぎると逆に錆が進行します。
電子防錆は、しばしば磁石・磁気工法と混同されますが原理も工法もまったく異なっております。磁石・磁気は理論がマチマチで裏づけに乏しく、何を図れば証明できるのかがないため、専門家も疑念を持っています。
電子防錆工法の特徴は、静止した水にも効果があります。一方、脱気工法は夜間に酸素濃度が上がることが報告されています。脱気した水道水で野菜を洗うと、しおれてしまう現象が起きるようです。また、電子防錆工法には水中の菌に対する殺菌効果もあります。また、受水槽給水から直接給水に切り替えても工事が可能です。他の工法では、水道法による性能試験をクリアしていないので、地域により採用できない場合があります。当工法のみが水道法による性能試験に合格しています。
当工法は水質を悪化させる懸念が全くありません。むしろ、わずかに活性化させます。それに対し、今年の2月に週刊朝日で取り上げられたように、他工法には健康への懸念があるものがあります。ライニング工法に使われる樹脂にはビスフェノールAが含まれ、環境省では動物実験中です。管内洗浄するとエポキシ樹脂がはがれ、赤や青い水が出ることが報告されています。完全に2液性エポキシ樹脂が混合されれば起こり得ないことですが、現場での混合、狭い管内での塗布作業を考えると期待しがたいのではないでしょうか。硬化剤にはアミンという有害物質も使用されており、安全性の確認が必要だと思います。
施工後の赤水解消期間もライニング工法を除く他工法では3ヶ月程度掛かる様です。当工法は洗浄との併用で短時間で赤水を解消できます。工事範囲は揚水管を含めた全系統です。工事費用は、100世帯で1,500万円程度です。電気代は1世帯当たり40円/年、機器の保証期間はメンテナンス契約をした場合10年保証をすることになっております。


三浦工業(株) 前 裕 氏
―具体的な説明は、「給湯・給水管対策のすすめ」をプロジェクターで説明されました。―
三浦工業は創立昭和2年、資本金95億、従業員1,700人の会社です。自社製品の主体は工業用ボイラーであり日本では50%のシェアがあります。防錆脱気装置を始めて16年目になります。原点はボイラーの錆防止から始まり、薬注工法から現在では脱気工法へシフトしています。給水管を半分に割ってみると継ぎ手部分に錆が集中しています。配管を取り替えるとなると壁を一旦取り壊すか、壁際に配管が這うことになってしまいます。当社では15〜20年程度で、この様にならない処置を高ずることが必要と考えました。鉄と水と8~10ppmの酸素があって初めて錆が発生します。何を取り除くことが有効かと言うと、当然酸素であることに行き着きました。
―錆の進行度と溶存酸素との関係図を説明―
商品名をZブリザーバと言います。特殊な気体分離膜と真空システムを実用化した脱気装置により、大量の給水に耐えうる脱気処理が可能で安価にできるようになりました。既に赤水が問題となっているマンションにおいても、根本原因の腐食を止めるため、赤水防止はもちろん、配管の寿命を大幅に伸ばすことができます。
特徴としては低コストで赤水防止・配管の腐食防止ができることです。膜脱気工法は生活水に何も添加しないので飲用にも安心です。清涼飲料水、ビール等の製造工程で使用される水も脱気水です。
施工については完全パッケージの装置ですので水槽に接続すれば工事完了です。(定期的なメンテナンスは必要)約半日の断水で専用部に入ることもなく日常生活に支障をきたさない工法です。
水中の酸素を抜いてしまうので、その水の中に入れた金魚が死ぬのではないかという質問がありますが、水道の蛇口から水が出てくる時点で再び酸素が供給されるため心配ありません。


マンション問題総合研究所理事 青山和憲 一級建築士 (ディスカッション抜粋)
各社のセールスポイントをまとめると、A(いずみライニング)は、給水管を原状回復させること。他社は現状維持であり、B(日本防錆工業)は、確実な理論に裏付けされた防錆効果があり、C(三浦工業)は、給湯・給水管双方に効果があり工期が短いということでしょう。
ライニング工法は塗りの回数で保証が異なるようですが、各社ごとに保証期間について述べて頂きたい。
A社:施工上ピンホールが、どうしても発生するため、長い間には錆が発生します。ライニング
    工事部分の保証期間はシングルライニングが5年、ダブルライニングが10年です。更
    新部分の保証期間は2年です。
B社:防錆機器は、メンテナンス契約を結んでいれば保証期間内は無償取替えします。保証
    期間は10年です。
C社:メンテナンス契約で装置の保証期間は5年となっています。

今回は3つの工法を伺いましたが、他にも様々な工法があります。管理組合の皆様が工法を検討する上で重要なことは、選定する工法を充分に理解することではないでしょうか。管理組合が、どのような改修工法があるのかを知った上で個々のマンションに適した改修工法を選定することが必要だと思います。



テーマ2:ペット問題を解決したマンションの事例紹介
ペット問題はマンション個別の事情により解決方法が異なってきますので、一概にこれが良いという方法がありません。皆様のマンションでも「飼育禁止か許可か?また具体的にどう取り組めば良いのかわからない。」等の問題を抱えているのではないでしょうか。
 ペット問題への取り組み事例として越谷スカイハイツ管理組合の竹永理事長と谷塚コリーナ管理組合の向井理事にご自身がお住まいのマンション事例を発表して頂きました。

事例 @:越谷スカイハイツ 管理組合理事長 竹永 啓太郎 氏
規約に禁止条項なし。ペット愛好会とその会則をつくった例。
事例 A:谷塚コリーナ 管理組合 ペット問題小委員会 向井 良政 氏
原則禁止から動物飼育特別許可制度をつくりあげた例。

越谷スカイハイツでは元々ペット飼育に関する規則が無く個々のモラルに委ねられていました。近年ペットを飼育する方が増えマナーの低下より管理組合が3年前にペット飼育問題の検討に着手しました。様々な検討の後、ペット愛好会を発足し「ペット愛好会会則」をつくりました。会則の内容はペット飼育が認められた場合は、ペット愛好会の活動に参加し、ペット飼育マナーの向上に努め、近隣の迷惑とならないよう十分な注意を払うというもので万一、会則に違反した場合はペット愛好会または管理組合から注意を受けそれに従うことになります。悪質な規則違反者は勧告されペット飼育を中止することになるという大変厳格な規則です。また、ペットを飼育するには飼い主が、正しい知識を身につけることが重要であることから、管理組合主催で年3回のペット飼育マナー講習会を開催しマナーの徹底化に努めています。越谷スカイハイツはペット飼育が出来るマンションとして公にスタートしてから賃貸住戸の空室率が圧倒的に低くなる等、結果として資産価値もアップしました。

谷塚コリーナでは元々ペット飼育は禁止(小鳥と魚を除く)の規則がありましたが、隠れてペットを飼育している方が増えてきたため、ペット問題小委員会を発足し解決策を模索していたところ、昨年の埼管ネット地域交流会で越谷スカイハイツの取り組み事例を知ったことがきっかけとなり検討を進め「動物飼育特別許可規則」をつくりました。越谷スカイハイツと異なる点は、あくまで全体管理規則ではペット飼育は禁止でありペット飼育者として良好な資質が認められる場合に限りペット飼育を特別に許可するものであることです。許可を受けたペット飼育者は「ペット飼い主の会」に加入し規則を守らなければなりません。悪質な規則違反者に対しては、飼育許可の取消し、場合によっては「動物飼育特別許可規則」そのものを廃止し当初のペット飼育禁止マンションに戻すことも視野に入れ、規則違反はペット飼育者全体の共同責任となる厳しい規則運用を行っています。

2つのマンション事例でペット飼育のルール化に成功したポイントは、何れも居住者へのアンケート及び聞き取り調査を通し「ペットを飼わない人、ペットが嫌いな人の立場になって問題を考える」ことでした。また、ペット問題を検討推進するには「ペット飼育の正しい知識と居住者間のコミュニティ」が大変重要であることがわかりました。「ペット飼育のルール化」については、引き続きホームページで詳しく紹介して行きたいと思います。
 竹永様、向井様、貴重なペット問題への取り組み事例を発表して頂き、ありがとうございました。心より感謝致します。

アンケート調査による今後希望するセミナーのテーマは、1.管理費の未納問題 2.長期修繕計画 3.大規模修繕の順でした。今後とも埼管ネットでは、居住者のためのマンション管理実践セミナーを計画して行きたいと考えております。


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